D・アトキンソン氏の主張のウソ・矛盾・証拠なし一覧

D・アトキンソン氏の主張のウソ・矛盾・証拠なし一覧

 デービッド・アトキンソン氏が「幼稚な議論から卒業せよ」と上から目線で言っている割には論理が矛盾していたり、主張のエビデンスがなかったりして突っ込みどころが満載だった森永康平さんとの動画を視聴したので、その感想と氏の主張に対する指摘一覧です。

「財政支出っていうのは人口が増えれば 子供の教育費が増えます。家を作ることになると道路が必要になってきて下水も必要になってきます」

 人口が増加したからといって必ず家が建つとは限りません。既にある住宅に住むこともありますし、増加した人間が都市に行けば無駄に道路・下水は作る必要はないので支出するとは限りません。また例え1%の人口が減少したとしても、1.5%物価が上昇すれば財政出動は逆に増加します。

(島倉原氏が作成したOECD加盟国32か国と中国の財政支出の伸び率とGDP成長率の分布図(上写真)を指して)「これ大問題です。・・・仮説としてはですね、GDPが成長して財政が増えたという仮説も、財政が伸びてGDPが述べたっていう仮説も同等この図表から読めるんですよね。因果関係を示しているわけではないのでただの相関関係しか示せてないんです、ここまでその(相関が)強くなるとですね」

 強い相関関係を認めていて、且つ「因果関係がない」ことを証明できない時点で、このグラフを「大問題」と吐き捨てるいわれはないですが少し掘り下げて、では下図はアメリカと日本のGDPと政府最終消費支出の年推移グラフです。日本が1995年までGDPが伸びていた翌年、GDPと財政支出は同時に減少しました。また2012年から13年にかけても同じく急激に減少していますが、アトキンソン氏の仮説である「GDPが成長しているから財政支出している」という因果ならば、GDPが上がっていたのに政府は財政出動を減少させた理論が成立しません。翌年GDPが自然に急減することを予期して財政出動を丁度よい感じに減らせたのですか。GDPと財政出動の減少の仕方に着目した時、どちらがその傾向を急変できるかといえば、政府の財政出動に決まっています。つまりGDPが急減したから財政出動を減らしたのではなく、財政出動が減少したからGDPが減少したということです。

 そもそもGDP算出式の一部に政府最終消費支出の加算が含まれるので、値域の幅はあるにせよ政府支出が増えればその分GDPが上昇するのは当然です。故に因果関係です。さらにアトキンソン氏はこの後「支出によってGDPがどれだけ増えるかの乗数効果の方が大事だ」と主張しますが、それは以上の因果関係を認めた上での難癖なので主張がすでに矛盾しています。

「学識と人間の身長がその ほとんど1ぐらいの相関関係になってるので、じゃあ背が伸びれば頭良くなるのかとかですね、その事実ない」

 そもそも学歴が高い人ほど身長が高いなんて相関性ありません。東大生は皆2m級ですか?何ですかこのウソは?

「海外の徹底的な統計分析によってはですね、エビデンスとしては100%ではないんですが、GDPが延びてそこから税収が自動的に上がってきて、政治家としてはそれを返すこともできるんですけども政治家は政治家としては分配をすることによって自分たちの価値が上がるわけなんで、結果として財政支出が増えたんです。」

 これはエビデンスではなくて仮説を語っているに過ぎません。

「人口増加は成長の半分なので・・・」

 そのエビデンスを提示してください。どこから半分が出たのですか?残りの半分は何ですか?

 

「重要なのは日本は人口が増えてないので、これまでの常識から外れている国なので今までの常識から外れているということも十二分考えられます。」

 グラフで示すOECD加盟国のうち、ポルトガル、ポーランド、ハンガリー、エストニア、ラトビア、イタリアなども人口減少に転じている国ですが、なぜ日本だけ「人口が増えてない」「常識から外れている」と言えるのか理解できません。

(アメリカの政府支出とその乗数効果を示した上図を示して)「アメリカなんですけど乗数効果なんですよね。要するに1兆円を出せばGDPどのくらい増えるかっていうところなんですけど、ご覧のようですね、これが教科書にあるものではなくて、これ実際にあったアメリカのそのものなんですけども、お金を出してそれ以上の効果があるっていう、先ほどのグラフにありましたために、その裏に潜んでいるのはですね、この乗数効果が1以上であるという考え方なんですよね。出した金額はGDP成長として戻ってくる。ただ実際に見るとアメリカでさえ1を超えることほとんどないんです。一応超えた時はどういう時なのかっていうのは不況の時なんです。でこの不況の時に何が起きてるかっていうと失業が増えてるんです」

 GDPの算出は「消費+投資+政府支出+(輸出-輸入)」で、GDP成長率は「(当年GDP-前年GDP)÷前年GDP×100」であるはずですが、政府支出の乗数効果が1以上(民間の消費や投資が増加し)ないとGDP成長ではないという定義は初めて聞きました。一般の人が思うGDP成長とアトキンソン氏の思うGDP成長の認識に違いがあるまま島倉氏のグラフを批判していたわけです。ならばこの認識の違いを最初にいうべきです。それはともかく、では不況の時には1を超えていると述べているので、不況時という条件付きではあるものの財政出動によってGDPが成長するという因果関係を自認したわけです。ちなみに2022年パスカル・ゲーマンス氏の論文によると、不景気よりも不確実な時期の方が乗数効果は高いという論文が出されています。

「積極財政ガンガンやることによって 日本経済良くなるかというとですね、良くなっていく保証は私は少ないと思います。でこれはもう一つその細かく言うとですね、ご存知の通りそのGDPというのは需要と供給でできてるわけなので、需要を増やすことによって供給が同等に同時にその増えていけば経済は成長しますけれども、供給の問題が色々あった中で人口がそんなに増えない。政府が出動することによって需要をどんどん増やしていく。この供給が動かなければこの需要っていうのはどっか に消えなきゃいけないですよね。どこに行けるかというとですねまあそれは需要があってもお金が回ってきたとしてもないものは買えないわけなので日本国内の企業が供給を増やさなかった場合に輸入を輸入品を買うということあり得るんですよね。そうするとGDPはその分だけ増えないです。日本政府が出した財政出場というのは海外に流れていくだけ。」

 「積極財政で日本経済が良くなっている保証が少ない」と思う理由が、「増える需要に対して供給が追い付かず輸入に頼るとなるとGDPは増えない」と主張していますが、供給が追い付かなくなると思うエビデンスが全くない、もし供給が追い付かない場合それはインフレーションという現象で示されるので出動する額は容易に減少調整可能です。また輸入品を買うことを想定した場合も、その輸入品にだけお金が使われるわけではなく、決済及び輸送は日本で支出されますし、海外の資源や機械を購入した場合でも、その加工や修理、点検等は日本でやるので海外に流れていくだけではありません。結局アトキンソン氏も都合の良いところだけエビデンスを提示し、多くは印象で語っています。いわば互角の議論でありながら、島倉氏のグラフを「大問題」と断罪するその度量の低さ、人間性に不信感すら抱きます。

「積極財政によって人の賃金を上げた今まで統計データはないんですよ。」

 以前Twitterで積極財政の定義を聞いたところ「積極財政は財政赤字(税収と支出の差)で計る」ということを聞いたので、イギリスが税収の3倍という猛烈な積極財政をしていた1994年以降数年の積極財政のグラフを示したところ(下図)、無視されました。当時イギリスの平均賃金は上昇しています。よってこれが因果関係とは言えませんが、「統計データはない」ことはないです。

「だいたい政府がお金を出すときにインフラ投資であったりとかですね出すこと多いんですけども、そうすると建設現場に人が増えるということなのでだいたいその雇用が増えていった時に、どちらかといえば平均賃金より低い賃金が増えるということで賃金が上がるどころか上がりにくくなる荷重平均なので」

 その論理で賃金が上がらないと否定するならば、後に主張する「乗数効果の高い投資先に投資をするべき」というのも乗数効果の高い投資先の雇用が増えるので平均賃金は年々下がります。同じことです。ただ単に、高付加価値を生む産業に投資するのがてっとり早いという主張だけなら同意です。

 「海外の分析によりますとこの経済の生産性向上につながるインフラ投資であったり研究開発教育だとかですねこの割合が増えるとGDPに対して貢献するっていうことが確認されています。そういう意味では」

 「海外の分析」はどこの何という調査なのか適当です。「生産性向上」とは何を意味しているのか、販売数量が増加するのか、販売単価が上がるのか、労働者が減少するのか漠然としており、これもTwitterで追及しましたが、無視されました。

「(乗数効果が)期待ができるその企業の生産性向上につながる確率が高いものに徹底的に出しましょう。そうすると納税者としては飲みやすいと思いますし、財務省の人たちは頭が悪い事実ないわけだから飲みやすいです。」

 え、でも先ほどアメリカの統計で不況時しか乗数効果が1以上の時はなかったとご自身で言っていますが。1を超えないと成長とはいえないとご自身で言われていたはずでは?逆に不況時であれば特別生産性向上につながる確率が高い投資にこだわる必要はないともいえます。さらにいうとそれよりも不確実な時期の方が乗数効果が高いという先で示した論文があります。

「1299万人の生産年齢人口が減るということは究極何がそこに 影響が出るのかというとですね 労働者の問題じゃないんですよ。それは納税者が減っていくっていうことと、あとはね買う人が減るということなんです。・・・人間が減るということは 住む場所いらない、電車に乗る人が減る、学校を使う人いなくなるいろんなマイナスの影響が出てきますんで」

 急に出てきた「1299万人の生産年齢人口が減る」って何年から何年のことを言っているのかさっぱりわかりません。また納税者も購買者も減るといいますが、同時に労働者も減りますし、機械化が進むのであればなお労働生産性は変化しません。GDPは下がるかもしれませんが一人当たりGDPが下がる根拠は一層ありません。購買周期が改善し物価が上がればむしろ一人あたりGDPが増えることも十分あります。

「それで生産性向上すれば、これさえやれば増えますよとか、ある意味で生産年齢人口が減ってるところで需要が足りないというのは、それは人がいなくなってるから足りないということは認めます。でもそれは積極財政で埋められるか埋められないです」

 アトキンソン氏は「安倍政権以降はデフレではない」と言ったり様々な意見がある「積極財政派」をひとくくりにして、「需要が足りないというエビデンスはない」と否定していましたが、一転認めていますね(笑)。国語力がある人ほどこの人の真意は読み取れません。また「積極財政によって(生産年齢人口が減少したことにより減少した)需要は埋められない」と主張していますがこれもエビデンスを提示していません。できるわけがありません、なぜなら先ほど「政府が出動することによって需要をどんどん増やしていく」と自身で矛盾した発言をしています。

「残念ながらあんまり建設的な議論になってないんですよそういう意味では」

 いや私的には、上から目線で自分の主張したいことだけを言って、反論は受け付けない人格を否定するといった建設的な議論になっていないのはアトキンソン氏の方だとTwitterを見ている多くは思っているはずです。

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