ホリエモンの消費税と経済に関する事実誤認

ホリエモンの消費税と経済に関する事実誤認

 話題になっていたので観てみましたが、インボイス反対派を馬鹿にしたいのか、低所得者を馬鹿にしたいのか対象がバラバラで何がいいたいかよくわかりませんでした。ただ5分という短い動画の中に事実誤認がふんだんに盛り込まれていたのと、影響力のあるユーチューバーさんなので悪影響が広がらないよう誤っている箇所を指摘しときます。

「インボイスの問題もそうなんだけど、元々特例で消費税導入された時にあなたたちは免税事業者で払わなくていいよって特別に免除されてたのをちゃんともうそろそろ消費税も定着して来たんでちゃんと払ってくださいねっていう話をしてるだけなのね」

 そんな話ではありません。行政府の長である岸田文雄内閣総理大臣が「インボイス制度は、あくまでも複数税率の下で適正な課税を確保するために導入するものであります。これは税率の引上げのような増税には当たらないと考えております。」(衆議院 決算行政監視委員会・第5号・令和5年6月12日)と説明しているので完全なる事実誤認です。例えば標準税率(10%)が適用されるお酒と、軽減税率(8%)が適用される食料品の間で、この適用税率の適用間違いや過少な申告が行われているという実態を鑑みての方策ということです。また消費税導入時に「定着度で免除を廃止する」なんて方針は政府は表明していないどころか議論すら議事録を見ても確認できませんし、そもそも免税点制度は納付税額の計算が困難な人のためにつくられた制度であり、定着度とは無関係に免税事業者は現在も選択可能です。選択可能だが資本主義の構造上過剰事業者に強いられる問題や手間が増える上煩雑なこと、社会経済全体に対する景気の引き下げなどさまざまな支障を来すことから批判が来ているのです。課税売上高一億円以下の事業者が行う一万円未満の仕入れについて、帳簿のみの保存でも定着する6年間は仕入れ税額控除ができるよとする特例措置と勘違いしているのか、どちらにしても閲覧者が誤解するような発言をしています。

「消費税ってあのそもそも金持ちはたくさん消費するのでその分めちゃくちゃ絶対額たくさん納めてんですよね」

 正しいとも読み取れる部分はありますが、大いに誤解を受ける表現です。確かに統計上でも高所得者の方が1家計当たり消費支出額が大きいというのは事実です(下図左)。ただ収入に対する支出割合でいえば高所得者ほど低いので、低所得者の方がたくさん負担しています(下図右)。

 「絶対額をたくさん納めている」という主張も、1家計単位で考えればその通りですが、国に入る総額で言えば、家計収入の中央値442万円より低い所得の世帯数は61.5%存在し、所得が1000万円以上の高所得者は10%ほどしかいませんので(下図)、平均所得100万~400万円の世帯の納付額の方がたくさん納めています。なので高所得者の税金によって「社会保障だったりとか皆さんの生活を豊かにするために使われる」なんて言われは誤解しか与えない暴論です。

「それをね通貨発行して社会保障費賄えばいいじゃねえかとかって言うんだけどそしたら通貨が安くなっちゃうじゃないですか」

 通貨を発行すれば円安になるほど経済は単純ではありません。新規国債発行額が多かったのは2009年~12年にかけてですが、日本はむしろ円高になっています。なのでこれも事実誤認です。

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