及川幸久氏の親露プロパガンダ動画を信じこんでいる人に

及川幸久氏の親露プロパガンダ動画を信じこんでいる人に

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 世界が注視するロシアによるウクライナ侵攻について、元駐ウクライナ大使の馬渕睦夫氏や、ユーチューバーとして一定の評価を得ている幸福実現党の及川幸久氏などが、自身の動画でロシアを擁護する動画を作り人気を集めています。「国際金融資本家たちと対峙するプーチン大統領」という荒唐無稽な設定を信奉する人が増加している印象を持つ中、あまりに離れた点と点をつなぎ陰謀を妄想するのは個人の自由ですが、信用度が極めて低いロシア発情報を中心に発信している動画を観て、これこそが真実だと見誤ることのないように、批判的な見方を提案します。

(1) 及川幸久氏のロシア擁護動画はほぼロシアメディア発情報

 及川氏は西側情報ばかりと情報源の偏りを訴えますが、そもそも東側メディア(=ロシア)が虚偽報道ばかりのため、信用が微塵もないから西側情報を頼らざるを得ないわけです。 

 及川氏が今回指摘する動画内で紹介するニュースメディアはDON24.RU、EADaily等ですが、これらは拠点が全てロシアにあります。ロシアは22年3月、虚偽情報を流布した場合、最大10年~15年の懲役刑を課す法律を導入しており、英BBC、米CNN、米ブルームバーグ通信のほか、ドイツの公共放送ARDとZDN、イタリアの公共放送RAI、スペインのEFE通信が活動を停止、またロシアの独立系メディアも多く解散に追い込まれるなど、プーチン政権に都合の良い情報しか流せない状態になっています。報道規制がされた国のメディアが情報源となっていることを理解し、批判的に視聴する必要があります。


(2)「マリウポリの劇場爆発はウクライナ兵によるもの」というデマ

 及川氏は自身の動画「2022.3.29【ウクライナ】ウクライナ人の人気YouTuberが伝える現実と希望!誰が子供劇場を爆破したのか?【及川幸久−BREAKING−】」で、「子供達が避難していたマリウポリの劇場を爆破したのはロシア軍ではなく、ウクライナ軍である」という趣旨の情報を意図的に流しています。しかも、劇場爆発はマッケンジーインテリジェンスサービスの分析によって推定されたレーザー誘導弾(KAB-500Lか類似の変種)ではなく、建物内部で起きたと説明しています(画像下)。実際に検証していきます。

 下はMaxar Technologiesによる空爆前の劇場と空爆後の劇場の画像です。またその下のツイッター動画は空爆後の劇場をより鮮明に観る事ができるので、これらを使って確認します。もし内部からの爆発であれば内側から外側へ破片が飛び散るはずですが、屋根などが外部への飛散した跡は見受けられません。また1階部分の壁が半壊で上階が全壊しているので、もし内側から爆発させたのであれば、上階に多く爆弾を設置したはずですが、そのような設置はまず考えられません。空爆による破壊と見るのが自然です。

 次に、この劇場に隠れていたという女性が「アゾフ大隊のウクライナ兵がマリウポリの建物を爆破した」との証言を紹介しています(画像下)が、この女性は DON24.RUというロシアを拠点とするメディアで証言しており、女性の詳しい情報も不明です。一方、同じくこの劇場に避難していたという女性の証言をAFP通信が報じていますが、この女性はビクトリヤ・ドゥボビツカヤ(Viktoria Dubovytskaya)さん(24)といい、姓名・年齢ともに判明しており、「ウクライナ兵はいなかった」と証言しています(劇場空爆の生存者、「恐ろしい」体験語る ウクライナ)。 どちらの情報が信頼性高いと思いますか?

爆撃を受ける前はとても美しい劇場でした。

https://youtube.com/watch?v=WKQnounkt14

(3)「産婦人科病院の空爆で撮影された妊婦はクライシス・アクトレス」というデマ

 この動画内で及川氏は「産婦人科病院の空爆で報じられた血だらけの妊婦は、クライシス・アクトレスだったことが100%バレました」「ウクライナ側が仕組んだ」と断言しています(画像下)。事実であればとんでもない事ですが、調べてみました。

 この女性はマリアンナ・ポドグルスカヤさん(Marianna Podgurskaya)といい、3月9日マリウポリの産婦人科病院が空爆とみられる被害を受け、入院していたポドグルスカヤさんが避難するシーンをAP通信のウクライナ人記者ムスチスラフ・チェルノフ氏が報じて注目されました(写真下)。彼女はその後11日に無事出産したことも報じられています。

※AP通信記者がロシア軍による病院爆撃時の状況を動画で配信しています。

※ マリアンナ・ポドグルスカヤさんが無事出産した時の状況が動画で配信されています。

 この空爆について、ロシア国防省のイーゴリ・コナシェンコフ(Igor Konashenkov)報道官は10日、「同国の軍用機はマリウポリの地上目標に対する攻撃を一切行っていない」「ウクライナ軍が西側諸国の視聴者に向けて反ロシアの誇大宣伝を維持するために行ったもの」との声明を出しています(AFP通信)。

 またロシアの国営通信社イタルタス通信は10日、ロシアのラブログ外相が、7日に開かれた国連安全保障会議でロシアのネベンジャ国連常駐代表が「マリウポリの”第一”病院がウクライナ過激派の拠点となっている」と訴えたことを引用し、「我々はウクライナを攻撃していない」などと主張する内容を報じています(「Лавров заявил, что роддом в Мариуполе использовался в качестве базы батальона “Азов”」)。

 しかしこの空爆について詳細に検証しているCNNによると、爆撃を受けた産婦人科病院は、マリウポリにある「第三市民病院」(画像下、出典CNN)で、ラブロフ外相の指摘した第一市民病院ではありません。さらに爆撃数時間前の9日、ロシア外務省のマリア・ザハロワ報道官は「第三病院にはスタッフと患者がいなくて、発砲位置として使用されている」と述べており、主張の辻褄が統一されていません。仮に「第一病院」と「第三病院」が過激派組織に占拠されているのであれば、突発的な戦時にも必ず存在する妊婦達はどこに隔離されていたのでしょうか。

 また「民間人を盾にしている」と時々主張するロシア国防省は、なぜウクライナ軍が「盾」としている民間人を空爆したのか、辻褄合わせに苦労しているかもしれません。

 このデマは10日、「Signal」と呼ばれる匿名のTelegramチャンネルが「彼女はマリウポリのモデルで、人気美容ブロガーである」と報じたたことから親露派系メディアでいっせい拡散され、彼女が紛争の被害を強調するために演じる「クライシス・アクトレス」であるという不確定な情報がSNS等で広がりました。及川氏はこれを根拠にクライシス・アクトレスだったと述べているのでしょうか?砲撃が絶え間ない地域で本当に”ドラマの撮影”などできると思っているのでしょうか。100%デマと断言しているわけですから、責任をもって「反論」もしくは「被害者への謝罪」動画を公開すべきと思います。

 現地マリウポリで取材していたAP通信記者チェルノフ氏はウクライナ軍による攻撃をもちろん否定しています(「”Why? Why? Why?” Ukraine’s Mariupol descends into despair」、下はりゃんぽうすさんによる和訳)。

 その後4月1日、マリアンナさんがロシアのメディアに出演し、「ウクライナ兵が第三病院に訪れて、入院している妊婦を家に帰すように言った」「ウクライナ兵は第三病院を拠点としようとしていた」「二度の爆発があり、それは空爆でなく砲弾のようだった」という趣旨の証言をした動画がテレグラムにて報じられ、Youtubeでも公開されています。彼女の証言が事実であれば、 ザハロワ報道官の指摘通り、第三病院はウクライナ軍の拠点になっており、それを知ったロシア軍が砲撃を加えたとすれば辻褄が合います。虚偽だとしても、ウクライナ軍が自ら重要な拠点に限られた砲撃をするのはあまりにも不自然です。ちなみにマリアンナさんは2月にロシアが独立を承認したドネツク出身で、最近マリウポリに来た女性でなので、事情が単純ではない可能性があります。いずれにしても、彼女がウクライナ軍によって用意されたクライシス・アクトレスではないことは明らかになりました。


(4)「クラマトルスク駅へ砲撃したのはウクライナ軍」というデマ

 また及川氏は自身の動画「2022.4.16【ウクライナ】東部の鉄道駅へのミサイル砲撃の真相とは【及川幸久−BREAKING−】」で、4月8日にウクライナ東部クラマトルスクの駅にミサイル砲撃があり、女性子どもら50人が死亡する攻撃について、ロシアによる攻撃でなくウクライナ軍によるものであるという主旨の報道をしています。及川氏は「ロシア軍が使っている戦術ミサイルシステムはイスカンデルで、今回使われたのはトーチカ(U)であって、これはウクライナ軍が使用しているんです。なので、どうみてもロシアが(ミサイル砲撃を)やったとは思えない」「トーチカUのシリアル番号が91579はウクライナ軍のもの」と主張。さらに「ロシアによる民間人虐殺と見せかけるため自国民を殺すウクライナ軍」と断定しています。

 しかしこれもデマです。同ミサイルはロシア軍、ウクライナ軍双方とも所有している兵器であることが知られており(Wikipedia)、ロシア軍がウクライナに侵攻した直後の2月24日に、病院に放ったミサイルがトーチカUだったことが第三者機関ヒューマン・ライツ・ウォッチによって記録されています。さらに匿名のSNS「テレグラム」で親ロシア派メディアが「ウクライナ軍が集結しているクラマトルスクの駅を10分前に攻撃した」と報じた直後に削除したことも判明しています(時事通信)。


 ここではあえてロシアの夥しい紛争の歴史やこれまでの手口等は書きません。なぜなら「昔やっていたことを今やるとは限らないじゃないか」という若い方々の純粋な考えも理解しているからです。逆にその流れを知らなくてもこのデマは判別できるということでもあります。

 ロシアは情報統制された国です。国民には政権の都合の良い情報しか伝わりません。加えてGRU、FSB、SVRといった諜報機関によってロシア発の偽情報を拡散させることで他国民を混乱させ、西側情報に対する不信から米国不信→親露へと誘導する工作活動がSNS等で活発に行われています。及川氏は動画で正しい情報を発信する意思より、そういった反西側および親露的な信頼性の低い情報を敢えて取捨選択して紹介しており、その結果視聴者を誤った方向に導く事実上のデマゴーグとなっています。

 3月25日に採択された国連の「ウクライナに対する人道状況改善を求める決議案」に対し、ロシア連邦を取り囲むベラルーシを除くヨーロッパの隣国ノルウェー、フィンランド、エストニア、ラトビア、リトアニア、ポーランド、ジョージア、アゼルバイジャン、ウクライナは全て「賛成」をし、ロシアを非難しました。隣国はロシアの巧妙な手口と怖さを知っています。ちなみにアジアの隣国カザフスタン、モンゴル、中国は「棄権」、北朝鮮は「反対」を選択しています。

 第三者機関である国連人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチは、ロシアによるジュネーブ条約等の戦時国際法、国際人権法等の抵触や、病院へのクラスター弾を使用した非人道行為、「対人地雷全面禁止条約」で禁止されている対人地雷を設置した不法行為を既に認定しています。これだけルールを守らない国家発の情報が正しいと思えるのであれば、事実としてあなたはロシアの思惑通りになっています。 

 

 最後にプーチン政権がこれまでに仕組んだとみられる暗殺、暗殺未遂の歴史を動画にしましたので、興味がある方はご覧ください。

2件のコメント

  1. 夢のメトロ

    ロシア側の情報は、画像や動画内に、ウクライナ側が原因であることや証言者が直接映っていることが多い。
    一方、ウクライナ政府の発表が多く、画像や動画内に証拠はなく、いつもナレーションやテロップでロシア側の行為であることを非難するものばかり。アメリカのアナリストによると48時間以内にフェイクであることがバレてます。

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