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中国国家統計局の公表データや日本政府の指標を用いて、中国の治安がどれだけ改善されたのかを調べてみました。なお中国の統計は信用ならないとの意見がありますが、正確なデータでなくても治安の傾向は一定程度参考になるとの見方で分析しています。
① 殺人事件は日本の1.4倍
国家統計局で公表されているデータが認知件数ではなく起訴件数なので実際はもう少し多いかもしれませんが、中国の殺人件数は2000年の28,429件をピークに減少に転じており、2020年は約7,000件と約4分の1まで減少しています。一方、日本はバブルが崩壊しアジア通貨危機が起きた1990年後半から2002年にかけて、平成以降で犯罪が最も多い時期となっており、殺人検挙件数も2003年がピークとなっています。ちなみに2003年といえば、大晦日TBSが「K-1 PREMIUM 2003 Dynamite!!」を、フジテレビでは「PRIDE男祭り」が放映されるなど格闘技ブームの全盛でした。
② 中国の強盗件数、20年前は日本の10倍、2020年は日本より減少
2000年以降20年間のギャップが猛烈です。あくまで起訴件数なので公安当局がサボれば件数は縮小するものだと思いますが、一方で「共同富裕」をスローガンとする習近平政権の強圧施政によって実際に重犯罪が減少した可能性も否めません。
③ 傷害件数は日本が中国の2倍超
どうしても日本の10万人あたり傷害件数の方が多いと統計を疑ってしまう偏見がありますが、認知件数でなく起訴件数であるため、ありえないこともない数値です。中国の傷害起訴件数は習近平が国家副主席になった2008年、また中央委員会総書記に就任した2012年あたりから減少しています。
④ 中国の婦女暴行件数は日本の2倍超
性暴力犯罪は日本が千件台なのに対し、中国は安定して未だ3万件以上発生しています。10万人あたり件数も日本の2倍超と多く、これは昭和50年代の日本の件数と酷似しています。
⑤ 中国の詐欺件数は日本の10倍超
中国の詐欺件数は年々増加傾向にあり、特に2018年以降の増加幅は加速度的な伸びを示しています。2020年は約200万の詐欺事件があったことから、2020年の詐欺加害者被害者合わせた事件関係者は最低でも400万人を超えたことになります。国民1000人あたり件数でみても日本の10倍となっています。中国も詐欺が多発するほど経済が活発化した証左といえる指標です。
⑤ 中国の誘拐は流行がある?
中国の人身売買や女児誘拐は古典にもしばしばみられるほど伝統的な犯罪で、2013年には2万件を超える誘拐事件が起訴されています。
⑥ 経済状況によって刑法犯が増減
中国において殺人や強盗はGDPやGNIが増加すれば減少する傾向にあり、一方詐欺事件はGDP、GNIが増加するほど多くなる傾向が見られます。