西田昌司議員の歪んだ歴史認識の押し付けがしつこい件

西田昌司議員の歪んだ歴史認識の押し付けがしつこい件

この記事を読むのに必要な時間は約 15 分です。

 経済理論では賛同することが多かった自民党の西田昌司議員が陰謀論の沼に陥っています。「歴史的経緯を見ながら多角的に物事を見ていかないと真実は見えない」と言いながら、なまじっかな歴史認識を持ってしまったが故に、誤解をもとにアメリカ悪玉論を展開しているので、真実が見えないどころか経済理論すらトンデモ論だと誤解を生じかねません。動画内の発言から認識がおかしいと思われる箇所を指摘します。

ウクライナ支援・ロシア敵対は日本の国益なのか?冷静・中立な判断が重要だ!【西田昌司ビデオレター令和4年4月22日】

ロシアとウクライナはもともとソビエト連邦の主要国であった。まさに同じ国の国民であったわけです、ついこの前までは。それは今回内戦になっているわけです。今回の紛争は事実上内戦と考えても良い話」

 この前と言ってもソ連が解体したのは四半世紀以上も前、30年前の話です。その上ウクライナは、プーチンでさえ認めていた主権国家です。2010年にプーチン政権は「ウクライナ領上ロシア連邦黒海艦隊の駐留問題に関する条約」を締結しており、条約を締結するということは国家として認めていた証拠です。西田議員の論理だとインドネシア独立戦争はオランダが300年間統治していたんだから手出しするな、朝鮮戦争なんか同じ民族の争いだから内戦もいい所、もし仮に北朝鮮が日本に侵攻してきたとしても、一時は日本人だったのだから内戦だ、助けは不要という論理になります。

ロシアとウクライナの仲介をする人が必要。ところが今はそれを全くしていない。一方的にウクライナを支援している。彼らの仲介するのが大事なんですね」

 フランス・マクロン、トルコ・エルドアン両大統領、ドイツ・ショルツ首相の仲介も辞さず問答無用でプーチンが侵攻し続けているから西欧諸国が武器を支援していることは、ニュース好きな小中学生ですら知っていることです。

「今のゼレンスキーさんはミンスク合意を反故にした」

 そのミンスク合意の解釈が双方の国で異なる余地があるので、ロシアが侵攻する口実になってしまったわけです。「多角的に観なければ」と動画視聴者に諭す西田氏自身が、ロシアの政略的な狡猾さを全く考慮していません。

「ウクライナ問題は夫婦に例えてみるとわかりやすい」

 そもそも夫婦のたとえが不適当です。

「(ウクライナを支援すれば日本は)ロシアとの関係が悪くなり、ロシアにとって日本が敵性国家になっちゃう。そうするとロシアは中国と逆に深い関係になる。そのことによって日本は圧倒的に国益を失うことになる。そういうことをわかってやっているのか。(ウクライナを支援する国民と岸田政府は)全くそういうことを考えていない」

 立場や状況によって主義主張を変えるというのは国力が貧弱だった李氏朝鮮の「事大主義」そのもので、前時代的且つ亜細亜的価値観と言えます。ただ事大主義というのは結局どこの国からも認めれず且つ信頼されません。「中立」というのは誰の味方でもあるようで実は誰の味方でもなく、それはつまり二度の大戦で虐げられたベルギーの歴史が示すように支援もろくに得られない危機をはらみます。仮に中立を装えば西欧諸国からは不快感を露わにされ、その上今回のようにロシアや北朝鮮から攻撃された場合、米国の支援はそれこそ危うくなくなります。

 他方ロシアにとって日本が敵性国家になったとしても、プーチン政権の後、ゴルバチョフやエリツィンのような左派的な大統領が擁立されることもあるかもしれません。また第二次世界大戦前打倒ナチスだったはずのソ連がヒトラーと独ソ不可侵条約を締結して世界を驚かせるほど打算的判断をする側面を持つ国家でもあるので、未来永劫国交断絶になる確証もありません。むしろ、対ロシアの貿易収支は原油、液化天然ガス、石炭、非鉄金属といった天然資源で輸入の8割近くを占めており(左下グラフ)、それによって毎年1兆円前後の貿易赤字を排出しています(右下グラフ)。国策としてのエネルギー資源開発投資の拡充や資源主要調達先をマレーシア・インドネシアへ見直す良い機会かもしれませんので、圧倒的に国益を失うというのは極端な評価です。

 またウクライナとの関係性の薄さを強調していますが、世界的な人口増加を遂げる国際協調の世界において、食料供給の一端を担うウクライナが蹂躙されることによってどのような影響が起こるかも俯瞰してみることが必要です。特に日本の隣国である中国への食糧輸出が多いウクライナの危機は、中国人の食糧危機に直結し、それは転じて日本の食料価格の高騰を予見させることになることも察知できなければいけません。

oec.worldによるウクライナの輸出国

 また西田氏は「ロシアと関係を良くするのは中国との結びつきを強めないためだ」と主張します。これは安倍晋三元総理もよく用いる論理ですが本当でしょうか。この論理を聞くと、大東亜戦争前大島浩駐独大使が「ビヨルケ密約」を根拠にナチス・ドイツとの同盟を推進したのを彷彿とさせます。国防上危険な国が二つあり、双方が結託しないようにどちらかと仲良くするという考えは一見戦略的で納得しそうな理論ですが、冷静に考えれば別に日本が敵国になろうがなるまいが、ロシアと中国は共に専制・共産国家としてお互い潰れたら困る一蓮托生な存在であるため、一定程度の協調は現に行われているし、もし侵攻することがあったとしても同じ理由で自由主義国の日本には付きません。かといって、より強い結びつきになるかといえばそれも同意できません。中国国内にも自由主義陣営との協調も重要だと説く共産党幹部はいるので、そう単純な構図にはなるとは思えません。

「ウクライナは日本の安全を脅かしている北朝鮮に兵器を売っていたんですよ」

 ロイターによると、ウクライナの国家安全保障・国防会議のトゥルチノフ書記は「1991年の旧ソ連からの独立以来、軍事レベルの弾道ミサイルを生産していない」とコメント。またAFPによると、英シンクタンク国際戦略研究所が「ロシアまたはウクライナの兵器庫の従業員が不正に密売し、犯罪組織によって北朝鮮に密輸された可能性があり、その時期は1991年のソ連崩壊と現在(2017年)のウクライナ危機の間だった」と分析しています。国家間の軍事協力というわけではありませんが、それすらだめだとすると、日本製の抵抗器やコンデンサなどの電子部品を使って対アメリカ向けの中国兵器は作られているので、アメリカは日本を助けないということになります。

スイス平和エネルギー研究所が暴露した衝撃の『ウクライナ戦争の裏側‼』

「プーチンはアメリカを信用していない」

 これはだれも真実はわかりません。私はその時その時で都合よく信用したりしなかったりしていると思います。信用していないはずなのにバイデンがウクライナに軍を派遣しないという言葉を聞いた後にウクライナに侵攻したのは何故だと思いますか?

「NATOは拡大しないという口約束を反故にされた。ロシアは危機感を感じていた。」

 NATOの役割は加盟国の領土と国民を防衛することです。「集団防衛」「危機管理」「協調的安全保障」を中核的任務としています(外務省)。他国を攻めるための組織ではありません。これになぜ危機感を感じるのか理解できません。単に自由主義と専制国家の勢力争いで劣勢に追い込まれての恨み節でしかないことになぜ気づかないのでしょうか。

 ウクライナの首都キエフはロシア発祥の地でもあるため、自国と思い込んでいるプーチンが西側に取られるのが許せなかったのでしょう。攻め込まれる「危機感」ではなく、侵略が絶望的になる「危機感」を持っていたのでしょう。下降していた支持率のこともあり、コロナ禍とオリンピックという監視が緩んだ期間を狙ったが失敗したに過ぎません。第三次世界大戦が懸念されるからと言ってそんな国際秩序と人権無視の「危機感」にすり寄って良いのですか?

「日本とロシアとは友好関係であるということでありますけど、日本に北方領土を返したらそこにそのまま米軍基地が作られるのではないかという大きな危機感をたぶん感じていた」

 日本固有の領土に基地を設置してもなにも悪くないですし、むしろ友好関係といいながら他人の領土に既に軍事施設を建設しているのはどちらなのですか?「危機感」を口実にやりたいことをしているのが事実です。軍拡を図るナチスドイツが「軍備平等権」が認められない理由でジュネーブ軍縮会議から脱退した時の名分の方がまだ納得できます。

小泉悠氏「北方領土におけるロシア軍近代化の現況と日本外交への示唆」より転載

「アメリカに対する不信感が北方領土返還できなかった根本にある」

 それならば不信感のあるアメリカと日米安保条約を結んでいる時点で北方領土は返還できないわけです。それなのに西田議員はなぜプーチンと無駄な会談を27回もする安倍総理を支持しているのですか?政府はロシアに対し2016年度から6年間で200億円の経済協力をしていたことが判明していますが(東京新聞)、プーチンは「仲良くして返還する素振りをすればバカな日本は経済支援してくれる」と思っているとなぜ考えられないのですか?時の松岡洋右(安倍総理の叔父・佐藤栄作の義理の叔父)が第一次世界大戦で日本が融通した金6,7億円(現在の価格で約2兆円)も返さず樺太の石油・石炭事業に対する妨害するばかりのロシアに対して「ロシヤとの国交回復によって得たもの等ないのみならず、実は非常な損害を被りつつある」と評していたことはご存じですか(出典「東亜全局の動揺」)?中国と対峙するためにロシアと仲良くすることが得策であるという考えは、まさに戦前ナチスドイツとの同盟を推進した大島浩の主張とそっくりです。いくら「敵の敵は味方」戦略が有効だからと言って、明確な人権侵害に虚偽扇動、国際協調の欠落した独裁国家にすり寄ることに、国際世論を牽引する先進国の為政者として抵抗はないのですか?

「ウクライナ戦争はシナ事変にそっくり」

 これも西田議員がよく用いるフレーズですが、確かにプーチンがシチュエーションを真似た感は所々見受けられます。おそらく大陸に進出した日本人、満洲に移動した朝鮮人が虐殺されるのを関東軍が助けているのに、アメリカが邪魔するという構図を想像しながら話していると思うのですが、例えば日本軍の行動とロシア軍の行動は同じようには見えません。当時は「救っている」側が「差別されている」側、ウクライナ戦争は「救っている」側が実際は「差別している」側です。関東軍の暴走は確かにありましたが、少なくともロシア軍のような虐殺はしていません。

「蒋介石は拡大したくなかったんだけど拡大するようにアメリカ・イギリスから援助物資を送られて・・・戦争拡大していく」

 戦線が拡大した発端は排日を呼びかけた張作霖や蒋介石や共産党員であり(それに加えて張作霖爆殺事件や綏遠事件、満州事変など一部関東軍が火に油を注いだのが原因でもある)、蒋介石が国連と米国にその都度訴えたからこそ援助があったのであって、そもそも英米が援助する前から大陸進出を妨害するソビエトが満蒙に兵站を供給し、さらに中華民国政府を支援していたドイツ国防軍が日本と同盟を締結する直前までファルケンハウゼン中将を送り込み支援していました。ファルケンハウゼンは蒋介石に「ヨーロッパに第二次世界大戦の火の手が上がって英米の手がふさがらないうちに、対日戦争にふみきるべきである」と進言して第一次上海事変に軍事顧問として参戦するなど戦線拡大に英米よりよほど大きな影響を与えています。

 ヒトラーは日本と三国同盟を締結しますが、ドイツ国防軍は日本より中華民国を伝統的に支援しており、締結直前まで日本と交戦していました。第一次世界大戦での賠償金の支払いに追われるドイツは、ヴェルサイユ体制枠外の蒋介石政府に武器と軍事顧問を提供し、中国から資源を輸入して経済を回すという良好な関係を築いていました。

 また仮に英米が援助していたとしても、国防のための自衛戦争でさえ武器を供与して助長するのが悪いというのであれば、常に言いがかりをつける国に侵略される国際秩序ができますが、それで良いのですか?

「一方的な西側の報道だけを見るのではなく・・・」

 逆に「一方的にロシアの報道ばかり見る」とどうなると思いますか?それを想像すれば、西側だけの報道で西田議員のような人が多く現れることはないはずです。つまり西側だけでなくロシアの報道も観た上で「ロシアが多く嘘をついている」と大半の人は認識しています。それはつまり、西田議員と歴史の知識はさほど変わらず、ただ見方が偏っている(都合の悪い情報はウソ報道、ロシアにすり寄る報道は真実と誤解している)に過ぎないということです。自分の方が歴史を知っていて西側を応援する人々は歴史を知らないのだという観点は、学者からは馬鹿にされ、国民からは傲慢な態度と受け止められかねず損しかありません。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です