この記事を読むのに必要な時間は約 2 分です。
「生」という漢字には多くの読みがあると知られていますが、実際にいくつかと言われると確定された情報はありません。漢字検定を実施している日本漢字能力検定協会のウェブサイトでは100種類以上あるといわれていますが、実際に「生」の読み方がどれほどあるのか調べてみました。
なお「生」の読みを調べるに当たり、ジャパンナレッジの『日本国語大辞典』が大いに参考になりました。また人名に関しては、苗字由来netを参考にさせていただきました。ありがとうございました。
「生」の読み、もしくは読みから転じた読み方の熟語
ID | 読み方 | 補 足 |
1 | 生(あ)る | 神霊、天皇など、神聖なものが出現する。 |
2 | 生(あい)憎 | 「あやにくや」の語形が変化したもので、江戸後期や明治以降の書物で多く確認できる。 |
3 | 紙生里(あがり) | 岩手県一関市にある地名。「なまり」から転じたか。 |
4 | 生(あや)憎 | 唐代初期の詩人である盧照鄰(ろしょうにん)の詩に「生憎帳額繡孤鸞」とあり、生憎は「あやにくや」と読み、「憎らしい」という意味で使われている。 |
5 | 生(いか)間 | 京都の料理人「生間出雲守兼信」(いかまいずものかみ・けんしん)から。また香川県善通寺市の地名「生野」(いかの)など。 |
6 | 生(い)きる | |
7 | 生(いき) | 「生きる」の連用形の名詞化したもの。「生上」(いきあがる)「生生」(いきいき)「生写」(いきうつし)「生石」(いきいし)「死生」(しにいき)など。 |
8 | 生(いぎ)谷 | 兵庫県宍粟市にある地名。 |
9 | 生(いく) | 人名「生田」「生井」「生島」、大阪市天王寺区にある神社「生国魂神社」、群馬県新田郡にある神社「生品神社」など。 |
10 | 生(いけ) | 「生花」(いけばな)「生垣」(いけがき)、料理の一種「生盛」(いけもり)など。鳥取県の温泉地「皆生」(かいけ)は「かい-いき」→「かいき」→「かいけ」と転じたか。 |
11 | 生(いご)守 | 福井県小浜市にある地名。「いくもり」から転じたか。 |
12 | 生(う)まれる | 香川県綾歌郡にある地名「生子山」(ううこやま)は「う」と「こ」をつなげて読むときに伸びた音。 |
13 | 生(うぶ) | 人名「生井」(うぶい)、「生毛」(うぶげ)など。 |
14 | 生(うまれ) | |
15 | 生(うる)神 | 石川県羽咋市にある地名。「生神社」(うるかみしゃ)に由来か。 |
16 | 生(お)い立ち | 秋田県の地名「小保内」(おぼない)など。千葉県佐倉市の地名「生谷」(おぶかい)は「お」と、「谷が深い」から「ふかい」が付いた読みか。 |
17 | 相生(おい) | 一つの根元から二つの幹が分かれ出ることや、いっしょに生まれ育つことなどの意味を持つ熟語。 |
18 | 生(おお)す | 髪などを伸ばす意味で「夜の寝覚」に記される。「御髪ながく―して」(夜の寝覚・五) |
19 | 生(おやし) | 新潟県や鹿児島県の方言でもやしのこと。 |
20 | 生(き)糸 | |
21 | 生(きっ)粋 | |
22 | 皆生(け) | 鳥取県米子市にある地名。「皆生(かいけ)温泉」が有名。「き」から転じたか。 |
23 | 生(ぐみ)野 | 熊本県熊本市北区にある地名。 |
24 | 生(さ)飯 | 仏語で、鬼神・餓鬼・鳥獣などに施すために少量取り分けた食物のこと。「生」の唐宋音「さん」の短縮形。地名「福生」(ふっさ)も。 |
25 | 生(さん)鉄 | 「さん」は「生」の唐宋音。未精錬の鉄のこと。 |
26 | 久生(し)屋町 | 三重県熊野市にある地名。 |
27 | 生(しょう)類 | 「生涯」(しょうがい)、「生薬」(しょうやく)、「出生」(しゅっしょう)なども。 |
28 | 自然生(じょ) | 自然薯。やまいもの異名。「しぜんじょう」「じねんじょう」「じねんじょ」に転じたか。 |
29 | 誕生(じょう) | 「往生」(おうじょう)、「素性」(すじょう)、「養生」(ようじょう)なども。 |
30 | 早生(せ) | 農作物・果実などで多品種よりも成熟期の早いもの。 |
31 | 生(せい)死 | |
32 | 平生(ぜい) | 普段、日頃。「ぜい」の読みは「平生」以外確認できず。 |
33 | 生(たて) | 鷹(たか)の腹の病気。 |
34 | 日生(なせ) | 岡山県備前市にある地名。「日生」(ひなせ)の由来は「日を成す」から転じたときびナビ。 |
35 | 子生(なじ) | 茨城県鉾田市にある地名。「子生」(こなじ)の由来は「子を生す」から「こなす」「こなし」「こなじ」に転じたか。 |
35 | 生(なま)ビール | |
36 | 生(なまり)節 | |
37 | 生(なり)業 | |
38 | 生(な)る | 「梅の実が生る」等実ができるときに使われる。 |
39 | 黒生(はい) | 千葉県銚子市にある地名。「は-え」から「は-い」「はい」に転じたか。 |
40 | 苗生(ばい)松 | 青森県平川市にある地名。「苗生松」(なんばいまつ)は「なえはいまつ」から転じたか。 |
41 | 桜生(ばさま) | 滋賀県野洲市にある地名。「ばさま」は「桜を生やす」を福岡の方言「ば」と、「生」の唐宋音「さん」を使った音から転じたか。 |
42 | 生(は)える | |
43 | 実生(ばえ) | 種子から芽が出て生長すること。 |
44 | 生(はえ) | 富山や徳島の方言で林や森、樹木の意。また九州にみられる苗字。 |
45 | 生(はやける) | 埼玉県の方言で孵化するの意。 |
46 | 芝生(ふ) | 「笹生」(ささふ) |
47 | 壬生(ぶ) | 京都市中京区の地名。琵琶湖にある島「竹生島」(ちくぶじま)なども。 |
48 | 生(む)す | 「苔の生すまで」(君が代) |
49 | 生(ゆく)家 | 福岡県福津市の地名。「生家」(ゆくえ)は「いくいえ」「ゆくいえ」「ゆくえ」と転じたか。 |
50 | 弥生(よい) | 「彌生」(いやおい)から転じたものか。 |
51 | 加生(よ)野 | 茨城県新治郡八郷町にある地名。「加生野」(かよの)は「かおいの」から転じたか。 |
52 | 浦生(ろ) | 香川県高松市屋島西町にある地名。 |
各々の字音がつながった読み
麻生(あそう) | 荻生(おぎゅう) | 芹生(せりゅう) |
桐生(きりゅう) | 瓜生(うりゅう) | 蒲生(がもう) |
柳生(やぎゅう) | 若生(わこう) |
「生」を使う当て字
生絹(すずし) | 晩生(おくて) | 寄生(ほや) | 寄生(ほよ) |
生業(すぎわい) | 生命(いのち) | 生薑(はじかみ) |
人名で用いられる読み
1 | 麻生(あそう) | 前の音と「う」とつないだために変化した音。浅生・朝生・麻生(あそう)、浅生田(あそうだ)など。 |
2 | 麻生川(あそがわ・あそかわ) | 麻生(あそう)から変化して「う」すら発音しない。 |
3 | 麻生島(あそしま・あそじま) | 麻生(あそう)から変化して「う」すら発音しない。 |
4 | 大生川(おおかわ) | 「おおうかわ」から「う」が省略されたか。 |
5 | 生方(おぶかた) | 「う」「うぶ」「ぶ」の読みから変化したか、あるいは「小生方」(おぶかた)から「小」が取れても同じ読みとしたか。 |
6 | 小生方(おぼかた) | 「おぶかた」の読みから転じたか。 |
7 | 生内(おぼない) | 「うぶ」の読みから変化したか、あるいは「小生方」(おぼかた)から変化したか。 |
8 | 若生(わこう) | 前の音と「う」とつないだために変化した音。赤生(あこう)・酒生(さこう)、若生・涌生(わこう)、竹生田(たこうだ)など。 |
9 | 菅生(すごう) | 前の音と「う」とつないだために変化した音。小菅生(こすごう)など。 |
10 | 菅生屋(すごや) | 菅生(すごう)から変化して「う」すら発音しない。 |
11 | 霧生(きりゅう) | 前の音と「う」とつないだために変化した音。蟻生(ありゅう)、入生田(いりゅうだ)、瓜生(うりゅう)、瓜生原(うりゅうはら)、狩生(かりゅう)、桐生(きりゅう)、久留生・久利生・繰生・栗生(くりゅう)、芹生(せりゅう)、鳥生(とりゅう)、針生(はりゅう)など。 |
12 | 荻生(おぎゅう) | 前の音と「う」とつないだために変化した音。荻生(おぎゅう)・麦生(むぎゅう)・柳生(やぎゅう)など。 |
13 | 藤生(ふじゅう) | 前の音と「う」とつないだために変化した音。梶生(かじゅう)など。 |
14 | 丹生(うにゅう) | 前の音と「う」とつないだために変化した音。埴生(はにゅう)、豊丹生(ぶにゅう)、門丹生(かどにゅう)、舟生・船生(ふにゅう)、間生(まにゅう)など。 |
15 | 丹生附(につけ、にっけ) | 「にゅうつけ」から「につけ」さらに「にっけ」に変化したか。 |
16 | 沼生(ぬまにゅう) | 前の音と「う」とつないだために変化した音。 |
17 | 日生下(ひゅうけ) | 前の音と「う」とつないだために変化した音。 |
18 | 柴生田(しぼうた・しぼおた) | 前の音と「う」とつないだために変化した音。 |
19 | 豆生田(まみゅうだ) | 前の音と「う」とつないだために変化した音。 |
20 | 稲生(いのう) | 前の音と「う」とつないだために変化した音。神生(かのう)、田生(たのう)、下生(しものう)など。 |
21 | 稲生田(いのだ) | 稲生(いのう)から変化して「う」すら発音しない。 |
22 | 蒲生(がもう) | 前の音と「う」とつないだために変化した音。天生(あもう)、玉生(たもう)など。 |
23 | 蒲生原(かもはら) | 蒲生(がもう)から変化して「う」すら発音しない。蒲生地(かもち)など。 |
24 | 大萱生(おおがゆう・おおがゆ) | 前の音と「う」とつないだために変化した音。 |
25 | 萱生(かよう・かよお) | 前の音と「う」とつないだために変化した音。小茅生(こがよう)など。 |
26 | 野小生(のおも) | 元来の「のもお」から「のおも」に変化した。 |
27 | 荒生(あろう) | 前の音と「う」とつないだために変化した音。 |
28 | 生實(なるみ) | 「なーる」の送り仮名を含めた読み。生實(なるみ)、生清(なるきよ)、生川(なるかわ)など。 |
29 | 生見(ぬくみ) | 「ぬく」の読みは調査中。 |
30 | 生井(ままい) | 「まま」の読みは「なま」から変化したか。 |
31 | 生天目(なばため) | 「なまてんめ」から変化したか。 |
32 | 天生目(なばため・あまのめ) | 「あまのめ」は「あまなめ」から変化したか。また「なばため」は「生天目」と誤解した読み方からか。 |
33 | 城生(じょうの・じょうのう) | 「の」「のう」の読みの由来は調査中。城生越(じょうのこし)、塩生(しおの)、友生(ともの)、小生(おの・おのう)、城生(じょうの・じょうのう)、御蘭生(みその・みそのう)、北生(きたの)、飯生(いいの・いいのう)、鵜生(うの)・桃生(もものう)、生浦(もうら)、羽生津(はもつ)など多い。 |
34 | 七生(ななみ) | 「み」の読みの由来は調査中。作家・塩野七生のように戦後から使われており、芥生(あざみ)、王生(いくるみ)、円生・圓生(まるみ)など多く使われている。 |
35 | 永生(ながす) | 「す」の読みの由来は不明。「さ(さんから省略)」「し(しょうから省略)」「せ(せいから省略)」の読みがあるから「す」もありとして使われたか。 |
36 | 砂生(さそう) | 「そう」の読みは「せい」から転じたか。笹生・條生(さそう)など。 |
37 | 有生(ありそ) | 全国に30人ほどの苗字という。「そ」の読みは「せ」から転じたか。 |
38 | 莇生野(あぞの) | 「ぞ」の読みは「ぜ」から転じたか。 |
39 | 石生(いしこ) | 「こ」の読みは「き」から転じたか。 |
40 | 生野(うくの) | 「うく」の読みは「いき」から転じたか。 |
41 | 草生(くさわ) | 「わ」の読みは「は」から転じたか。 |
42 | 生地(おんじ) | 「おん」の読みは「おい」から転じたか。 |
43 | 壬生(いくるみ) | 「いくる」と「み」か。読みの由来は調査中。 |
というわけで、字音がつながったもの、当て字、人名読みを含めずに確認できる読みは52種類でした。前者2つを加えても67種類。人名を含めると確かに110種類になりました。
以下は調べた読みの派生をあらわした図です。
また「生明」(あざみ)でしょうか