総務省統計局「家計収支に関する結果」より - データから読み解く日本の家計の実態
令和6年全国家計構造調査は、日本の約5,355万世帯の家計収支を詳細に分析したデータです。 このビジュアライザーでは、収入階級別・十分位階級別・五分位階級別の消費パターンを 多角的に分析し、日本の家計の実態を可視化します。
収入階級別の消費支出額と消費性向の関係
収入と食費の関係、エンゲル係数の推移
収入階級別の世帯数と割合
低所得〜高所得層の支出構成の違い
所得10等分による格差分析
授業料・補習教育費の収入別比較
家賃・設備修繕費の分析
外食・調理食品・穀類など詳細分析
自動車関連費・通信費の分析
世帯人員・有業人員・年齢の関係
旅行・趣味・娯楽への支出
医療費・健康関連支出の分析
収入が増加するにつれて消費支出も増加しますが、その伸び率は収入の伸び率より低くなります。 これは高所得層ほど貯蓄に回す割合が高いことを示しています。 一方、低所得層では収入のほぼ全額を消費に充てざるを得ない実態が見えます。
年間収入100万円以内と2000万円以上の収入差が約20倍なのに対し、消費支出の差は約4倍に止まります。 一定以上の高所得になると消費支出額は頭打ちになることから、財政の観点では高所得者を優遇しても経済波及効果は限定的であることが読み取れます。
「収入に対する消費支出の割合」は、月額収入に対する月額消費支出の比率で計算しています。 年間収入を12で割った推計月額収入と、実際の月額消費支出を比較しています。 低所得層で100%を大きく超える値が出るのは、貯蓄の取り崩しや社会保障給付等により、 勤労収入以外の収入源がある可能性を示唆しています。
19世紀の統計学者エルンスト・エンゲルが発見した「所得が増加するにつれて食費の割合が低下する」という法則が、 令和6年の日本でも明確に確認できます。収入100万円未満の世帯では食費が消費支出の31.9%を占めますが、 2000万円以上の世帯では22.3%まで低下します。ただし、食費の絶対額は高所得層ほど高くなっています。
世帯主の年間収入500万円未満の世帯が全体の約60%を占めています。 一方、1000万円以上の世帯は全体の約7%に過ぎません。 この分布は日本の所得格差の実態を如実に示しています。
低所得層は食料・住居・光熱水道など必需品の割合が高く、教育・教養娯楽などの裁量的支出が低くなっています。 高所得層では教育費・教養娯楽費・交際費などの割合が高く、生活の質や将来への投資に充てる余裕があることがわかります。
十分位階級で見ると、最上位10%の消費支出は最下位10%の約2.7倍です。 特に教育費では約38倍、教養娯楽費では約3.4倍の格差があります。 上位1%の世帯は月額約60万円を消費しており、平均の約2.4倍に達します。
このセクションでは、全国消費実態調査(1999年・2009年・2014年)と全国家計構造調査(2019年・2024年)の 5回分の調査データを統一的な集計方法で比較し、四半世紀にわたる所得格差の変遷を分析します。 ※1999年は収入階級別データから十分位相当を推計しています。
25年間で各階級の消費支出がどのように変化したかを可視化。 1999年をベースラインとして、低所得層と高所得層の消費の伸び率の違いから格差の動向を読み取れます。
パルマ比率(Palma Ratio)は、チリの経済学者ホセ・ガブリエル・パルマが提唱した所得格差指標です。 上位10%の所得と下位40%の所得の比率で計算されます。ジニ係数が中間層の変化に敏感なのに対し、 パルマ比率は高所得層と低所得層の格差に焦点を当てています。 一般的に、パルマ比率が1.0なら上位10%と下位40%の所得が同じ、2.0なら上位10%が下位40%の2倍の所得を持つことを意味します。
| 十分位 | 2009年 | 2014年 | 2019年 | 2024年 | 15年間変化率 |
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教育費は収入による格差が最も大きい支出項目の一つです。 最上位10%の世帯は最下位10%の約38倍の教育費を支出しています。 補習教育(塾など)への支出は高所得層で顕著に高く、教育機会の格差につながる可能性があります。
一見すると低所得層の住居費が低いですが、これは持ち家率の違いを反映しています。 帰属家賃(持ち家を借りた場合の推計家賃)を見ると、高所得層ほど広い・良質な住居に住んでいることがわかります。 低所得層は住居費の負担率(収入に対する割合)が高く、住居の質も低い傾向にあります。
外食費は高所得層で顕著に高く、2000万円以上の世帯は100万円未満の世帯の約7倍です。 一方、穀類や野菜など基本的な食材の差は比較的小さく、食の質や多様性に格差があることがわかります。 酒類も高所得層で高い傾向があります。
高所得層の外食費の25年間の推移から、バブル崩壊後の外食控え、リーマンショック後の回復、 そしてコロナ禍の影響と回復傾向など、社会経済的な変化を読み取ることができます。
自動車関連費は中所得層で最も高く、高所得層では公共交通機関の利用が増える傾向があります。 通信費は収入にかかわらず比較的一定で、スマートフォンの普及により必需品化していることがわかります。
高所得世帯ほど世帯人員が多く、有業人員も多い傾向があります。 低所得層は高齢者単身・夫婦世帯が多く、高所得層は働き盛りの子育て世帯が多いことがわかります。 共働き世帯の増加が世帯収入に大きく影響しています。
教養娯楽費は高所得層で顕著に高く、特に旅行関連の支出で大きな差があります。 月謝類(習い事)も高所得層で高く、子どもの課外活動や大人の趣味への投資に差が出ています。 文化的・知的活動への参加機会に所得格差が影響していることがわかります。
保健医療費は他の支出項目ほど収入との相関が強くありません。 これは日本の国民皆保険制度が機能し、医療へのアクセスが比較的平等であることを示唆しています。 ただし、健康保持用摂取品(サプリメントなど)は高所得層で高い傾向があります。
令和6年全国家計構造調査のデータを多角的に分析した結果、収入階級による消費パターンの違いと、25年間の格差推移について以下の知見が得られました。
日本の家計において、教育費と教養娯楽費が最も所得格差を反映する支出項目であり、
これらへの投資格差が次世代への格差再生産につながる可能性があります。
一方、保健医療費や通信費は制度設計や技術普及により比較的平等な支出となっています。
25年間の推移を見ると、格差は全体的に拡大傾向にありますが、
特に教育と余暇活動における格差拡大が顕著です。
これは単なる消費の差にとどまらず、人的資本や文化的資本の蓄積における格差を示唆しており、
社会的流動性への影響が懸念されます。